『鬼速PDCA』は自称世界一売れているPDCA本だけあり、評判もかなり高いですね。
レビューや書評を見ても、「かなり有用」といった感想を多く見ます。
実際に私もこの『鬼速PDCA』を実践することで、社長表彰を受けることができました。
『鬼速PDCA』のレビューや書評の中には「実際に試してみた」例が少なすぎて、参考になりませんよね。
この記事では、本気で鬼速PDCAを回し、実際に社長賞という結果を残すことが出来た私が鬼速PDCAの実践例を紹介します。
鬼速PDCAとは?
まず簡単に『鬼速PDCA』を解説します。既にお読みの方は飛ばしても問題ありません。
『鬼速PDCA』は誰でも知っているあのPDCAサイクルを文字通り鬼速で回すためのノウハウを紹介している本です。
「PDCAを回す」というスキルは、「マネジメントスキル」や「コミュニケーション能力」「語学力」といったスキルとは一線を画すものです
PDCAのスキルというのは、こうした各々のスキルの成長を加速させるメタスキルです。
いろいろなスキル習得に時間を費やすよりまず先にこのPDCAのスキルを習得する方が圧倒的に効率的です。
『鬼速PDCA』はこうしたPDCAを机上の空論ではなく、「使えるツール」として極めて実践的に解説しています。
PDCAは聞いたことあるけど「実際に回したことがない」「上手く回せない」という方が『鬼速PDCA』を読めば、だれでもPDCAを習得することが出来るでしょう。
実際に鬼速PDCAをやってみた
『鬼速PDCA』を読んで、実際に私は仕事で活用することにしました。
私は大手メーカーの総合職として、企画的な仕事をやっていました。
どうせ鬼速PDCAを試すなら難しい課題にチャレンジしたいと考え、「社長表彰」を目標に設定しました。
本書でも、「とてつもないゴール設定をするとその手前くらいまでは余裕で行けてしまう」と解説されていたため、「冷静に考えるとかなりキツイ」という目標にしました。
「社長賞をとる」という目標に対し、どのようにPDCAを回したのか、それぞれのフェーズごとに具体的にご説明します。
Plan_計画編
『鬼速PDCA』では、このP(計画)を非常に重要視しています。
ポイントはいかに具体的な計画を立てるか、ということです。
計画が曖昧で抽象度が高いと、「その次のステップのDoが停滞する」あるいは、「Checkフェーズで上手く効果を検証せずフィードバックをえられない」という事態に陥ります。
『鬼速PDCA』では具体的な計画の立て方について、以下の手順を紹介しています。
step
1ゴールを定量化する(KGIの設定)
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2現状とのギャップを洗い出す
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3ギャップを埋める課題を考える
step
4課題を優先度づけする
step
5各課題をKPI化する
step
6KPIを達成する解決策を考える
step
7解決策を優先度づけする
step
8計画を見える化する
重要なところを赤字で強調しています。
赤字のステップを噛み砕いてご説明します。
ゴールを定量化する(KGIの設定)
前述のとおり、「社長賞を取る」という目標を設定しました。
この目標自体、"Yes" or "No"で答えが出るため明確で分かりやすいですが、粒度が荒いです。
つまり、抽象的すぎるのです。
抽象的な目標を設定すると、そのあとの課題設定・解決策立案のステップにおいても抽象的なアイデアしか出ず、Do(実行)が上手く回りません。
そのため、なるべく具体的=定量的な目標に置き換える必要があります。
過去の社長賞の実績などを調べ、「これなら確実に社長賞が取れる」という目標を設定しました。
私はメーカーの企画兼調達のような仕事をしており、とあるコストを前年比-10%(1億円)削減すれば、社長賞が取れると考えました。(※数字は仮)
この目標は極めて具体的です。
KGIを「1年後に前年比-10%(1億円)削減」と設定出来るので、進捗を確認することが出来ます。
「社長賞を取る」という"Yes" or "No"のゴール設定だと、中間地点における進捗確認が出来ず、自分が正しい道に進んでいるかCheck(検証)してAdjust(調整)することが出来ません。
各課題をKPI化する
目標の定量化(KGI)の設定と同じことです。
KGIをクリアするための課題を設定するのですが「その課題も具体的にしろ」ということです。
「1年後に前年比-10%(1億円)削減」というKGIに対し、下記のような課題を洗いだしました。
「全然コスト削減の企画を立案出来ていない」
「考えた企画が全然通らない」
「企画1件あたりのコスト削減額が小さい」
これらの課題をKPI化(=定量化)します。
KPIはそれを達成することで、KGI(最終ゴール)が達成できるというサブゴールのようなものです。
KPIにより課題を定量化することで、Check(検証)フェーズで進捗を客観的に確認することが出来ます。
下記のとおり、課題をKPI化します。
課題 | KPI |
全然コスト削減の企画を立案出来ていない | 企画立案数:1件/週 → 5件/週 |
考えた企画が全然通らない | 企画通過率:20% → 40% |
企画1件あたりのコスト削減額が小さい | コスト削減額/件:50万円 → 100万円 |
このように課題を定量化することで漠然としていた目標が、手触り感のあるものになりました。
人間脳の構造上、抽象的なものを抽象的なまま扱うことは出来ません。
具体的なものに落とし込んで、初めて正確に物事を認識でき、思考・行動が可能になります。
KPIを設定すれば後は簡単です。
KPIを達成するための解決案を可能な限り洗い出し、優先度づけするだけです。
例えば私は「企画立案数:1件/週 → 5件/週」というKPIに対し、以下のような解決案を考えました。
KPI | 解決案 |
企画立案数:1件/週 → 5件/週 | 企画を考える時間を増やす |
他社事例を調べ参考にする | |
『ゼロ秒思考』のメモ書きをする |
Plan(計画)フェーズで検討する解決策はこのようにざっくりとしたもので良いです。
KPIを達成するための大まかな方向性程度に考えて下さい。
次のDo(実行)フェーズで更にブレイクダウンしていきます。
尚、解決案で提示した『ゼロ秒思考』については以下の記事をご参考下さい。
>>>『ゼロ秒思考』の効果は人生変わるくらい凄かった。3年続けたのでレビューする
計画を見える化する
計画フェーズにおいて、最後に重要な点が「計画を見える化」するということです。
本書では、KPIを常に意識するために「目に見える位置に紙で貼る」などの事例が紹介されています。
確かにKPI化を常に意識することは非常に重要です。
しかし、それよりも私は「目標(KGI)と課題(KPI)及びその解決のためのアクション(KDI※後述)が有機的に連動している」ということが分かるようにすることがより重要と考えています。
具体的に言うと、目標・課題・解決策をエクセルに落とし込むのです。
目標・課題・解決策が連動していることが分かるだけで、日々の行動が大きな目標に基づいたものということが分かるため、行動の大きなモチベーションになります。
私は下記のようなエクセルシートを作成して毎日確認し、PDCAを意識付けていました。
Do_実行編
続いて、Do(実行)フェーズです。
Plan(計画)フェーズで、ざっくりとした方向性として解決案を検討しました。
これを具体的なアクションに落とし込んで行きます。
以下は、私の例です。
解決案 | Do |
企画を考える時間を増やす |
毎日1時間企画を考える時間を捻出する |
時間捻出のためメールチェックを効率化する | |
他社事例を調べ参考にする |
社外セミナーに参加する |
関係する本を読んで情報収集する |
そして、ここからが重要なのですが、このDoを定量化してKDIを設定します。
このKDIという概念の導入が『鬼速PDCA』の最大の特徴と考えています。
行動さえ、定量化した目標に落とし込むのです。
KGIやKPIというという結果は外部要因にも左右され、100%完全に自分でコントロールすることは出来ません。
しかし、行動はやるかやらないかだけなので、自分でコントロール出来ます。
行動しなければ当然KPIを達成することは出来ません。
KDIという定量化された行動目標を設定することで、自分が計画通りに行動できているか進捗を確認することが出来るのです。
以下は私が設定したKDIの一例です。
解決案 | Do | KDI |
企画を考える時間を増やす |
毎日1時間企画を考える時間を捻出する | 毎日1時間企画を考える |
時間捻出のためメールチェックを効率化する | メールチェック時間:1時間以下/日 | |
他社事例を調べ参考にする |
社外セミナーに参加する | 月一回、セミナーに参加する |
関係する本を読んで情報収集する | 週1冊、本を読む |
ここまで行動を具体的に落とし込めば、「後はやるだけ」という状態になります。
一切、脳に悩ませる余地を与えないため、即行動に移せます。
また、行動の目的が明確になりますので、「これを実行すれば、確実に目標に近づく」ということが分かっているのでモチベーションアップにも繋がります。
「KDIどおりに行動できているか?」というチェックは、毎日やりましょう。
次のCheck(検証)フェーズでまとめてやろうとしても、忘れてます。
私の場合は、毎日始業前と終業後の2回チェックを行っていました。
始業前に一度KDIを確認すると、その日一日「何をすべきか」を意識することができます。
Check_検証編
KGI,KPI,KDIの達成率をチェックし、「上手くいってる要因」「上手くいっていない要因」を確認します。
鬼速PDCAを実際に回してみてみると、圧倒的にKDIの未達が多いです。
KDIが未達なので、必然的にKPI,KGIが未達となるパターンが多かったです。
そのため、私の場合はCheck(検証)フェーズでは、KDIの達成率確認と失敗(と成功)の要因分析がメインでした。
KDIが未達の場合は、「やる時間がなかった」「やる気が出なかった」のどちらかです。
それぞれの理由を更に因数分解して、原因を突き止めます。
やる気が出ずKDIが未達となる場合は、「なぜそのPDCAを回すのか?」という理由に立ち帰ればモチベーションが回復しやすいです。
例えばダイエットのPDCAを回している場合、何らかの理由があってPDCAを回しているはずです。
「モテたい」「かわいい服をきたい」「見返したい」などの理由(願望)を見つめ直しましょう。
私の場合は、「社長賞を取る」というPDCAは、更に上位の「転職する」というPDCAの一部であったため、やる気を失っている時は、この大きな大義を思い出しやる気を取り戻していました。
ちなみに、「転職する」というPDCAには、「英語力アップ」というPDCAもぶら下がっていました。(社長賞を取るというPDCAと並列関係)
TOEIC900点というKGIを設定していましたが、これも鬼速PDCAのおかげで無事達成することが出来ました。
Adjust_調整編
Check(検証)フェーズで、成功及び失敗の要因を受けて、KGI,KPI,KDIを修正します。
正直、私はあまり行いませんでした。
割とシンプルなPDCAであったため、KGI,KPIをほとんど修正する必要がありませんでした。
KDIを完璧に達成しているのにKPIを達成出来なかった時などに、KPIを下方修正したり、あるいはKPIの達成を早めるためにKDIの量を増やすなど調整を行っていました。
まとめ
これまで全くPDCAを回せなかった私が、『鬼速PDCA』を読んで実践することで、まさか達成出来るとは考えていなかった目標を達成することが出来ました。
『鬼速PDCA』は、「これさえやれば確実に目標に近づく」と思えるまで徹底的に掘り下げて計画を立てます。
取り組むには少しハードルが高いですが、真剣にやれば必ず効果が出るので非常にオススメです。
みなさんも是非取り組んでみましょう。