「交渉」と聞くとみなさん苦手な印象をお持ちではないでしょうか。
「交渉」と聞くと、戦って自分の意見を押し通すというイメージを持つかもしれません。
実は私も「交渉」という言葉にネガティブなイメージがあり、できれば避けたいものと考えていましたし、実際に交渉は苦手でした。
もともと内気な性格で、はっきりと物事を言える性格ではありませんでした。
そのため簡単に譲歩してしまい、結局相手に付け入れられ、どんどん相手の有利な方向に持って行かれることが多かったのです。
内気な人は譲歩しがちですし、こちらが譲歩すれば、相手も譲歩するだろう、という甘い期待を抱きがちです。
断言しますが、このような甘い期待で譲歩すると、相手から身ぐるみ剥がされるだけです。
今回は、営業/購買双方で様々な交渉理論を学び、実践の場として交渉を重ねてきた私が、実際に効果を実感した交渉のコツをご紹介します。
内気な私でも、難しい交渉を上手く乗り切れるようになりましたのでみなさんも是非試してみて下さい。
交渉を再定義する。交渉とは何か。
前述のとおり、「交渉」に"戦う"というイメージを抱く方が多いように思えます。
しかし、「交渉」とは、お互いの利益を調整し、当初より双方の利益額を増大させる共同作業を言います。
簡単に言うと、Win-Winの関係を築くプロセスのことです。
一般にビジネスは一回きりではなく、一定期間に渡り続いていくものです。
そのため、強強引に相手を押し切り「イエス」と言わせても、次回から取引してくれなくなったり、相手からの信用を失い、会社の評判を落としてしまう懸念もあります。
譲歩せず、かつ強引に押し切らず、相手と円満に解決を図ることが必要になります。
次からその具体的方法について、超基本の3点ご紹介します。
客観的基準を設ける
なるべく客観的基準を打ち出し、それに基づき交渉を進めると上手く行くことが多いです。
つまり、駆け引きをせずに、原理原則で攻める、ということです。
ここでいう客観的基準とは、市場価格、費用、専門家の意見、法律、慣例などです。
客観的基準を設けるメリットは、相手の圧力や駆け引きから身を守れることです。
例えば、価格交渉を考えてみます。
家電量販店で価格交渉する時は、価格.comで調べた市場価格が客観的交渉になります。
一般のビジネスの場で、ある商品を購入するとなった場合は、相見積もりなどで市場価格を類推したり、あるいは原価を推定し積み上げていき商品のコストを試算したものが客観的基準になり得ます。
客観的基準は客観的であるがゆえに相手が反論しづらく、反論してきたとしても論理的に対処することができます。
内気な人ほど、おすすめの方法です。
BATNAを準備する
BATNAという言葉に馴染みがない方が多いと思います。
BATNAはBest Alternative to Negotiated Agreementの略で、
交渉が上手く行かなかった場合の次に良い策をいいます。
簡単に言えば代替案のことです。
このBATNAを交渉の前に徹底的に準備しておくことが非常に有効です。
このBATNAが強ければ強いほど相手に対して強気に出れるからです。
「この交渉が成立しても困らない」という状況を作っておくことで、こちらに余裕が生まれ、相手からより良い条件を引き出しやすくなります。
例えば、相手から値下げ交渉をされても、他に高く買ってくれる買い手を予め見つけておくことで、譲歩せずに済みますし、
それどころか、値上げを要求することだって可能になります。
こちらのBATNAを大きく見せる
相手からより良い条件を引き出すのに有効なのが、こちらのBATNAを実際より大きく見せることです。
例えば、他に買い手がいない、あるいは同じ値段でしか買ってくれなさそうな買い手しかいない場合でもあたかも良い買い手がいると思わせる。
あるいは、本当は喉から手が出るほど欲しい商品であっても、あたかも代替案があるので買う必要はない、と振舞うなどです。
いわゆるブラフですが、非常に有効な手段です。
いかに相手に悟られず、こちらのBATNAを大きく見せるかが重要になります。
相手のBATNAを見極める
裏返しになりますが、相手のBATNAが本物か見極めることも非常に重要です。
相手のBATNAを過大評価してしまうと、もっと高く売れたものを安く買い叩かれたりします。
相手のBATNAを正確に評価するのは非常に難しいです。
相手に質問を浴びせ矛盾を生じさせたり動揺を観察する、複数の関係者から裏取りし矛盾を見つける、あるいは心もとないですが人となりで判断する、などの方法があります。
撤退ラインを明らかにする
留保価値やRV(Reservation Value)という呼ばれ方をします。
交渉を打ち切るラインを事前に明確にしておくこと、つまりここまでは妥協できるが、それ以上は妥協できないというラインを引くことです。
この撤退ラインを予め決めておくことで、不要な交渉を続ける必要が無くなりますし、傷口を広げずに済みます。
例えば製造業であれば、限界利益=0や営業利益=0となるような価格、あるいは予算達成に必要な金額などがあります。
また、これはBATNAと密接な関係があります。
A社に商品を11万円で売る交渉をしているとします。
ここで他に10万円で買ってくれるB社というBATNAを持っていれば、撤退ライン(RV)は10万円となります。
A社が10万円以上で買ってくれないと分かったら、これ以上A社と交渉は続けなくて良いとわかります。
撤退ラインを予め決めておくことで、交渉の場で堂々と自信を持って振舞うことができます。
その自信が相手と対等に戦う力をもたらしてくれます。
まとめ
今回は交渉の超基本である下記3つのコツをご紹介しました。
- 客観的基準を設ける
- BATNAを準備する
- 撤退ラインを明らかにする
これらは交渉の超基本ですが、意外にできていない人が多いです。
それゆえに、こちらがこの戦法をマスターして交渉に望めば絶大な効果をもたらします。
内気な私でも、何度も交渉で自分に有利な合意を取り交わすことができました。
身をもって効果を保証しますので、是非みなさんも交渉の場で試してみてください!